高齢者の筋力トレーニング文献まとめ(下肢、効果、回数、負荷、転倒予防)

リハビリ

こんにちは!今回は、高齢者の筋力トレーニングについて、文献を元に記載していきます!!

※文献紹介を元にまとめていきますので、専門職向けの記事になります。

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●このブログをみて得られるメリット

・高齢者の筋力トレーニングの考え方について、文献を一気見出来る

目次 

・筋力を決定させる要素

・高齢者の筋力トレーニング

・筋機能の協調性と課題志向的トレーニング

・臥位や座位での筋トレ vs 立ち上がり動作

・まとめ

・筋力を決定させる要素

▶︎いわゆる〝筋力〟といっても筋原繊維レベル〜関節レベルまで細分化すると以下のようになります。

以下文献より一部抜粋↓

【レベル別 筋力の要素】文献①より

筋原線維レベルではサルコメア張力に依存する.(力-長さと力-速度の関係が存在)

筋線維レベルでは筋線維張力に 依存(筋線維数,筋線維タイプ,筋線維横断面積が影響).

筋(筋束) レベルでは筋張力に依存する(収縮要素, 筋横断面積,筋長,筋アライメントが影響)

関節レベルでは、筋張力と腱の弾性要素によって関節トルクが生み出 される.(MMT)

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↑MMTで筋力をはかるときは、これらの要素が全て合わさって生じているということを知っておくことが大切ですね!!

・高齢者の筋力トレーニング

▶︎まずは、基本的な筋力増強の原則について記載します。

【筋力増強の原則】文献①より

1過負荷の原則

▶︎通常使用する筋力よりも高い負荷を課さなければ筋力増強は期待できない.

2漸増負荷の原則
▶︎筋力増強運動を行う前に 必ず 1RM の計測を行ったうえで,その日の負荷を設定することが原則として望ましい.

3反復性の原則
▶︎筋力増強運動は,即時的効果は期待できない. このことは高齢者や病態を有している者ほど顕著 である.そのため,適切な負荷での筋力増強運動を反復して行うことが重要である.

4特異性の原則 と 5意識性の原則
▶︎ただ単に筋力増強運動を繰り返しても効果は少 なく,その目的を明確にもつ必要がある.

●運動初期での筋力発揮を高めるのか

●筋持久力を高めるのか

●運動範囲全般を通して筋力を高めるのか

など

▶︎患者側も共通認識をもっておくことが重要である.

6個別性の原則
▶︎運動の効果には年齢,性差,体格,体力,技術レ ベル,経験,健康状態,精神状態など多くの要因が関係する.

7全面性の原則

▶︎特定の筋,特定の運動のみに焦点を当てることは,長期的にみると筋や運動を起こす関節に可逆的変成を起こすことにつながる可能性が高い. よって,全体的にバランスよく筋力増強を図ることが重要である.

▶︎筋力増強運動は通常「過負荷の原則」に基づき, 筋の収縮様式の違いによる

負荷量,頻度,回数(収縮時間)について設定する.

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↑特に高齢者については、若年者と比較すると日々の変動が大きいので、その日の1RMを把握することが大切かと思います。

では高齢者は、具体的にどれくらいの負荷量・頻度で行うべきなのでしょうか?

以下文献より一部抜粋↓

【高齢者の筋力トレーニング】文献①より

▶︎Hettinger の研究によれば,筋力維持には最大筋力の 20-30%以上の負 荷,筋力増強には最大筋力の40-50 %以上の負荷 が必要とされる.

▶︎筋力増強のための負荷の最低基準は「最大筋力の40%以上」が必要とされている.米国スポーツ医学 会のガイドラインでは,健康な成人のための筋力 トレーニング強度として 8ー12RM で最低 1セッ ト,週 2-3回の運動頻度を推奨している.

▶︎50-60 歳の高齢者や低体力者は 10-15RM で最低 1 セット,週 2-3回の運動頻度を推奨している.

▶︎高齢者やハイリスクの患者では,全身状態を十 分に把握したうえで対象者別に回数を設定することが望ましい.(積極的な個別の筋力増強ではなく全身の筋力維持・低下の予防が主な目的となるため,低負荷高頻度で実施する.)

▶︎高齢者や心疾患患者における抵抗運動についてのガイドラインが示されている.

高齢者の場合,8-10種類の運動を組み合わせれば 1セット(8-12回)で十分とされている .

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↑とのことでした!!

健常者とのトレーニングとの違いは、

・特に日々の変化を考慮して負荷量を調節する必要がある。(漸増負荷の原則)

・個別筋のトレーニングよりの全身的なトレーニングが有用(全面性の原則)

・負荷量は低負荷(10〜15RM)高頻度のトレーニングが望ましい

このあたりでしょうか。

・筋機能の協調性と課題志向的トレーニング

▶︎では、具体的にはどのような流れでトレーニングをしていけば良いのでしょうか?

まずは筋機能の協調性ついての記述を見ていきます↓

【筋機能の協調性】文献①

筋機能の協調性には

①力の要素

②空間的要素

③時間的要素

がある。

▶︎筋力を効率よく発揮するためにはこれら 3つの要素が協調的に作用することが重要である

↑筋力トレーニングをする際に、力の要素のみを考慮しがちですが、動作をする際には〝空間的要素〟つまり各筋肉の協調的な働きが大切になっていきます。

▶︎よって、トレーニングの初期に大切になるのは単一での筋収縮ではなく、効率的な各筋肉による収縮が行えているかという部分に着目する必要があります。

以下文献より一部抜粋↓

【筋力トレーニングの効果】文献②より

▶︎筋力トレーニングにおける最大筋力の増加は、筋興奮水準を決定する神経的要因と筋肥大の両因子に存在する。

▶︎筋力トレーニングによる筋力の増加に関する報告では、5~ 12週間の筋力トレーニングをおこなうと筋力は15~30% の増加を示すが、筋横断面積は5~10%前後の増加にとどまるとある。

▶︎トレーニング開始後20日までは筋力の増加は筋横断面積の増加を伴わず、その後は筋力の増 加と筋横断面積の増加が並行するという報告がある。

▶︎この筋力トレーニングの初期にみられる筋力の増加は、筋肥大を伴わないことが多く、筋力は筋量の増加よりも神経系の適応が反応したもので、主として随意的に動員できる運動単位の数が多くなる効果によってもたらされる。

▶︎筋力トレーニングでは、目標となる筋 力を発揮させるための正しい方法を体得させなければ、 継続して実施しても効果的な結果を出すことは困難である。

【筋トレ 神経因子】(質的トレーニング)

▶︎運動単位を最大に動員させることとなり、強度は1~5 Repetition maximum(以下、RM)、セット間の休息 は3~5分、負荷や回数、セット数は少なく設定する方法 がある

【筋トレ 筋肥大】(量的トレーニング)

▶︎筋肥大のためには筋を活性化させて疲 労困憊にさせ、強度は5~7RMから10~12RM、セット間 の休息は1~2分、負荷や回数、セット数は多く設定する方法がある。

↑とのことです。流れとしては、

①まず第一に、動作の中で各筋肉が協調的に働いているかを確認

②動作にで筋活動が不足しているターゲット筋を抽出

③※適切な負荷量で筋力トレーニングを実施

④動作を再確認し効果判定

といったところでしょうか。

③適切な負荷量については下記記載を参照下さい↓

【トレーニングと代償運動】文献①より

▶︎実施する際にターゲットとする筋は,少なくとも他の周囲筋より筋収縮により発揮される張力が低いため, 高負荷となると必然的に筋収縮力の強い筋による 代償運動が生じた状態にてトレーニング課題を実施する可能性が高い.そうなると,より強い収縮力を有する筋はさらに強化され,ターゲットとした筋収縮力が弱化した筋はあまり強化されず,運動における筋機能の空間的要素のバランスがさらに障害される.

▶︎また、動作や姿勢をみて筋力を予測するには、床反力を参考にすると分かりやすいです↓

【床反力について】文献①より

▶︎身体に働く外力として,加速度よりも床反力が身体重心に作用する外力のほとんどを占める.

▶︎その瞬間の姿勢が平衡するためには,床反力からの外部モーメントとその関節を保持するための内部モーメントが釣り 合っていると考えることができる.

▶︎内部モーメント には筋張力の他に,靱帯などの静的構成要素,関 節面同士の接触などが影響を与えることを考慮し ても,発揮されている筋力を推測することができる

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↑このように関節を保持するための内的モーメントを推測出来れば、筋発揮が出来ていない部分が分かるので、姿勢や動作で判断するということが大切かと思います。

・臥位や座位での筋トレ vs 立ち上がり動作

▶︎では最後は、いわゆる筋力増加トレーニングと、動作練習(立ち上がり練習)との効果の比較を行っている文献をご紹介します↓

【筋トレ ✖️  立ち上がり練習】文献③より

▶︎強い負荷による 筋力増強法(PRT) は膝関節や腰痛など筋 • 骨格系に有害な影響を及ぼすとの報告や, 筋力増強は機能的制限には有効な介入方法であるが,その成果として活動障害や健康 QOL に対する 効果があるかどうかは確定していないとの指摘もある。

▶︎小竹らは,椅子からの立ち上がりに要した大殿筋筋力(最大筋力の 27%)と大腿四頭筋力(最大筋力の 30%)は,Hettingerが指摘する ADL で必要な 20~30%に相当することから,筋力維持には,椅子からの立ち上がり練習 で充分であり,重りを用いた抵抗運動は筋萎縮のある対象者に適さないだろうと提言している。

▶︎人工関節全置換術(以下 THR と略す)の患者 5 例(平均年齢 64.8 歳) に対して,壁を利用した閉鎖性運動連鎖(closed kinetic chain:CKC)を利用した片脚起立と踵・爪先立ち運動で筋疲労感をめやすに反復練習を行い,従来群(臥位や座位での 運動法を用いた群)10 例と,術後から片脚起立までの期間を比較した結果,従来群が平均 5.08 か月 に対して,壁押し群は平均 2.85 か月に短縮傾向が認められた。

▶︎THR 術後の患者に対する壁押し運動や,椅子からの立ち上がり動作練習の時間配分を多くすると, 荷重不安に改善がみられたことから,筋力増強運動の最終局面では,CKC の理論を応用して,片脚 起立や爪先立ち,さらに椅子からの立ち上がりの様な動作を行うことは,背臥位や座位で下肢の筋を 個別に運動する方法に比べて,より実践的な下肢筋力発揮を習得させることにつながると考えられた。

【立ち上がり】

健常高齢者 20 例(平均年齢 63.4 歳)において片足立ち能力からみたバランス能力(安定群と不安 定群)と筋電図(内側広筋,両側脊柱起立筋)からみた立ち上がり戦略(モーメント戦略とスタビラ イズ戦略)とを比較し,

・安定群でモーメント戦略(スキル)

・不安定群でスタビライズ戦略

を用いることを確認 した。

▶︎大腿骨頸部骨折患者 9 例では,モーメント戦略導入によって立ち上がり能力が改善し, モーメント戦略導入の有用性が示唆された。

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▶︎基本動作と ADL 項目との 関係に視点をおけば,基本動作としての立ち上がり動作は,それ自体としてではなく,広く活動と して機能した時に,初めて ADL 遂行の手段としての意義をもつことから,筋力は,関節運動,基本 動作,さらに広く活動において,機能として有効に働くことが ADL 遂行のために極めて重要となる と考えられた。

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▶︎高齢者の 転倒予防に関する研究では,Sherrington らは,大腿骨頸部 / 転子部骨折後患者に対して,家庭での荷重練習(椅子からの立ち上がりや台へのステップ練習)を行った運動群と対照群(無荷重での股関節,膝関節周囲の筋群の抵抗運動)を比較して 4 か月の RCT では,荷重練習群で大腿四頭筋 力の改善を認めている。

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▶︎最近の脳卒中ガイドラインでは,起立―着席や歩行練習など の下肢練習量を多くすることが,歩行能力の改善のために強く勧められ,健側を含む全身の筋力増強 が期待されている。

▶︎高齢者や片麻痺患者に対する多様な姿勢での立位バランスや,多様な高さ やステップ台を使用して,椅子からの立ち上がりや,前後,左右のステップ練習などを導入した課題 志向的トレーニング(Task-oriented training)のPRTと比較して,その有効性が検証されている

▶︎de Vreedeらは,抵抗運動(PRT)は,ADLへの転移(運動学習 の効果判定要因)が機能的課題プログラムに比べて低いと指摘している。

↑これらをまとめると

・過負荷の筋力トレーニングは、関節などの組織損傷を引き起こす可能性がある。

・筋力増強トレーニングは、ADLに直結しにくい可能性がある。

・荷重を伴う動作訓練の方が、術後の荷重不安感が消失しやすく、運動効果も高い。

ということですね。これらのみをみると高齢者に筋トレっているの?って思ってしまいますね。笑

・まとめ

▶︎今回は、高齢者の筋力トレーニングについて記載していきました。

簡単に内容をまとめると、

・高齢者は低負荷高頻度のトレーニングが良い

・まずは動作や姿勢から、活動が不足してる筋をみつけることが大切

・単一のトレーニングを過度に行うよりも、全身的なトレーニングが効果的

・荷重を伴う動作訓練の方がトレーニング効果が高い

といった感じになりました。

高齢者のトレーニングは、若年者がジムで筋トレをするのとはまた意味合いが違うということですね。

さらに個々で工夫しながら行うことが大切なので、これが最適なトレーニングというもの無さそうです。

以上で終わります。

最後までお読み頂きありがとうございました😊

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文献①引用:木藤ら.筋力増強運動の基本と実際.Jpn J Rehabil Med 2017;54:746-751

文献②引用:山内.筋力トレーニング.関西理学 10: 19–23, 2010

文献③引用:岡西ら.筋力改善のための運動学習に関する検討名古屋学院大学論集 医学・健康科学・スポーツ科学篇 第 3 巻 第 1 号 pp. 41-50引用:山内.筋力トレーニング.関西理学 10: 19–23, 2010

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