こんにちは!今回は、遅筋のトレーニング方法についてまとめていきます!!
後半は文献も交えて記載していきます!
○管理人プロフィール
▶足と靴専門の理学療法士(8年目)。新人教育担当。理学療法士になる前に、足と靴の専門学校にて2年間学んできましたので、足・靴に対する知識は比較的豊富です。
▶実際の靴作りも行っていたので、構造的なこともお伝え出来ます。(ニーズがあるのかは不明)
・遅筋と速筋とは?
↑簡単にまとめるとこんな感じです。
また、各筋肉にはタイプ分類があり、それぞれ遅筋・速筋とリンクがあります↓
文献⑥
①so 線維 (タイプ Ⅰ)
短縮速度は遅いが,持久性に優れている。
②FG線維 (タイプ Hb)
速 く短縮 し,発揮する張力 も大 きいが,疲労
しやすい。
③FOG線維 (タイプ IIa)
FG 線維 と SO 線維の両方の性質を有 し,痩
縮速度 も速 く,持久性 も高い。
以上 3つの筋線維は,短縮速度における特性
か ら,FG 線維 と FOG 線椎 を速筋線維,so
線維 を遅筋線維 と大別することがある。
【サイズの原理】
運動強度により動員させる筋が異なります↓
【文献④】
サイズの原理に従い運動強度 (発揮筋力)が小 さいときは, まず遅筋線維が動員 され,運動強度が大 きくなると連筋線維 も動員 されるようになる。
【遅筋、速筋の形態学的な違い】
↓遅筋と速筋は、写真で確認してもけっこう形態が異なります!
【文献④】
Type I は Slow-twitch,oxidative および遅筋(赤筋)に対応し,形態学的には筋線維径は細く,横紋構造は不明瞭で Z 帯が太く筋形質膜の辺縁にかたまる大型のミトコンドリアを持つ↓。
神経筋接合部における筋形質膜の波状のヒダである junctional fold(神経下裂隙)の数と分岐は少なく,短い。生化学的には酸化酵素活性が高くミオグロビンが多いが,解糖系酵素活性は低くグリコ-ゲンも少ない。すなわち有酸素性運動の際に主に活躍する筋線維タイプといえる。
Type II-b はFast-twitch,glycolytic および速筋(白筋)に対応し,筋径は太く Z 帯が細い。また,ミトコンドリアは小型で数も少ない。
junctional foldの数は多く,長く複雑に分岐する。生化学的には酸化酵素活性が低くミオグロビンが少ないが,解糖系酵素活性は高くグリコ-ゲンは多い。従って,急激なパワーを要求されるような無酸素性運動の際に主に活躍する。
Type II-a は Fast-twitch,oxidative, glycolytic に対応し中間筋ともよばれtype I と type II-b の中間的な特徴を持つ。Type II-c は成熟した正常筋ではほとんど見られず,胎生期の筋の一部や再生中の筋が該当する。
↑こんな感じです。
これだけみていると、遅筋と速筋はかなり別物の組織のような印象さえ受けます。
筋力増強による遅筋化などについては後述しますが、トレーニングでこれらの組織を変化させるのは何となく難しいことのように感じます。
【各筋肉のタイプの傾向】
【文献④】
ヒトにおける type I 優位の筋としては,
母指内転筋(80.4%)・大腿二頭筋(66.9%)・長腓骨筋(62.5%)・ヒラメ筋(86.4%)・前脛骨筋(73.4%)・脊柱起立筋(58.4%)などがあげられ,
type II優位の筋としては,
上腕二頭筋(57.7%)・腕橈骨筋
(60.2%)・眼輪筋(84.6%)・大胸筋(57.7%)・大腿直筋(70.5%)などがあげられる。
↑これについてはあくまで傾向になりますが、トレーニングの際の一つの指標になりますね!
・遅筋のトレーニング方法
では次は、遅筋のトレーニング方法について記載します!
文献を簡単にまとめると、
↑とりあえずこのあたりを抑えていたら良さそうです!
以下、詳細は文献の一部をご覧下さい↓
【文献③】
筋力発揮に関して,サイズの原理というものがある.これは,低負荷に対してはST繊維が活性化され,負荷を増加していくと活動する筋繊維がFT繊維に移行していくという原理である。
このことを踏まえると,低負荷のスロートレーニングではST繊維が活動すると思われる。
【文献④】
Sale ら43)は 35%MVC 以上で維持または改善(主にtype I線維),約 70%以上ですべての筋線維タイプが効果的に収縮し改善する。
・その他文献
【文献①:遅筋はストレッチ後に筋張力が上がる】
詳細については、以下に文献を一部抜粋したのでご覧下さい↓
骨格筋に対するスタティックストレッチングは、Ib抑制により伸張反射を抑制させ、最大筋力を低下させるといわれており、スポーツ競技のパフォーマンス直前には推奨されていない。
しかし、動物モデルにおいて、遅筋線維では速筋線維と比較して、骨格筋の持続伸張によりCaイオン濃度が上昇し、筋張力は増大すると報告されており、筋線維タイプの違いによりストレッチング後の筋張力発揮に違いがあることが示唆されている
(結果)ストレッチング後の足関節底屈のピークトルク値は、ストレッチング前と比較して7%増大し有意に高い値を示した(p>0.05)。一方、足関節背屈のピークトルク値は、ストレッチ前後において有意差を示さなかった。
また、足関節底屈と背屈のピーク時間においては、ストレッチング前と後の値では有意差を認めなかった。
本研究において、スタティックストレッチングは、ストレッチング前と比較して、足関節底屈のピークトルクを有意に増加させ、ヒラメ筋の様な遅筋線維の割合が多い骨格筋では、スタティックストレッチングは筋出力を増加させる可能性が示唆された。
これは、ストレッチングにより遅筋線維の筋張力が増大したことによるものと考える。
筋収縮は、筋小胞体から放出されたCaイオンが、トロポニンと結合するとアクチンフィラメントが活性化され、ミオシンフィラメント頭部と連結橋を形成し、筋張力の大きさは活動する連結橋の数に比例すると報告されている。
また、遅筋線維は速筋線維に比べてCaイオンに対する感受性が高いと言われている。
これらのことから、遅筋線維では、速筋線維と比べ、持続的筋伸張によりCaイオン濃度が上昇し、アクチンとミオシンの連結橋が増加した結果、筋張力が有意に増大したと予測される
【文献②:遅筋特性獲得のメカニズムについて】
以下文献より一部抜粋しています↓
遅筋はType I線維,速筋はType II線維に富み,Type II線維にはIIa/IIx(遅筋に近い特性を有する)とIIb線維がある.持久力トレー
ニングによる遅筋化にはType IIbからIIa/IIx線維への移行促進が大きく貢献することはよく知られた事実である。
持久力トレーニングによる筋線維タイプ移行には同じ遺伝情報から異なった表現型を示す,いわゆるエピジェネティックな制御が関与している可能性が高い.一方,運動トレー
ニングによるType IIからType I線維への移行は起こりにくいとされ,この移行には何らかの障壁が存在していることが想定されるが,その理由は未だ明らかでない.
PGC-1αの過剰発現が骨格筋ミトコンドリア量や毛細血管密度増加といった遅筋特性を獲得させること,運動中の脂肪酸利用率を増加させること,運動持久力を向上させることを認めた.
また本モデルマウスの解析により,Type IIbからIIa/IIx線維への移行がPGC-1αによって促進されることを見出すことはできたが,Type IIからI線維への移行についてはPGC-1αで説明することはできていない.
PGC-1αを骨格筋に過剰発現させると遅筋の性質を獲得することが示されていたが,遺伝子発現パターンと脂質組成の結果より,PGC-1αによって遅筋化した骨格筋は本来の遅筋とは異なっていることがわかった。
【有酸素トレーニングの効果】
【文献⑤】
以下、文献の一部を抜粋↓
有酸素性トレーニングによる持久力の向上は筋線維タイプの遅筋化だけでなく、ミトコンドリア量の増加や脂質酸化能の亢進などエネルギー産生効率の上昇も関与している。
近年、これらの変化が転写共役因子である PGC-1αによって制御されていることが明らかとなってきており 、筋の収縮特性と代謝特性が密接に関連していることを示している。
実際に、肥満症患者の筋では酸化的代謝能の低下と解糖的代謝能の上昇が認められているが、同時に遅筋線維の割合低下も生じている。
・まとめ
▶簡単に内容をまとめていきます!
↑こんな感じでしょうか?
速筋の遅筋化はすぐに出来なさそうですが、それ以外の因子でエネルギー効率は上がりそうです!
今回はこれで終わります。最後までご覧いただきありがとうございました。
参考・引用文献
【文献①】永田ら.スタティックストレッチングが遅筋線維優位であるヒラメ筋のピークトルクに及ぼす影響.Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)2012
【文献②】三浦ら.運動トレーニングによる骨格筋の遅筋特性獲得のメカニズム.体育力学2015 年 64 巻 1 号 p. 36
【文献③】鈴木ら.スロートレーニング時の筋活動の分析Analysis of the muscle activation in slow training.ライフサポート Vol.23 No.4, 2011
【文献④】猪股ら.理学療法のための筋の基礎知識 ─種々の条件による筋の変化および筋萎縮とその対応について─.埼玉理学療法 11:2-11,2004.
【文献⑤】森ら.トレーニングによる筋線維組成変化のバイオイメージングによる可視化〜 新たな研究モデル動物の創出 〜
【文献⑥】市橋ら.筋力 トレーニ ングの基礎知識一筋力に影響する要因と筋力増加のメカニズムー.京都大学医療技術短期大学部紀要別冊.健康人間学 第 9号 1997
コメント